1.胸騒ぎの夜|バイブレーション求めて感じて愛し合って

vibe1「金山さんが結婚かぁ、そういうお年頃だよね」

私、安西《アンザイ》マイコは、短大卒業後に一般事務として札幌のハヤタマ食品に入社した。今年で5年目のOL生活を迎える。

同期入社は5名で2名は既に転職し男性社員1名は昨年パートの女性とデキ婚済み。
残りの女性社員、金山さんは来月に挙式で華麗なる寿退社となる予定だ。

とうとう同期の中で何の変化も無いのは私だけとなった。

「何も無いわけじゃないんだけどね」

冷蔵庫から缶酎ハイを取り出してグラスに注ぐ。
クマさん模様のグラスは私の趣味では無く希美《のぞみ》ちゃんが選んだ。

私は同じ会社の営業の笹原《ささはら》希美ちゃんと付き合って半年を迎える。
2歳年下の希美ちゃんは会社でバリバリの営業職なのに2人きりになるとまるで別人のように甘えん坊に変身する。
抱っこしてぇとおねだりする子供のように愛らしい一面もある。

希美ちゃんは私が短大時代に付き合っていた元・恋人とは真逆のタイプだ。
もちろんベッドの中でも……。

私はつまみと酎ハイを持ってパソコンの前に座る。

「何か面白いことないかなぁ」

残業が続くと疲れているクセに家に戻ってパソコンの前に座りゲームやネットサーフィンをする。

無心でゲームをしようと思ったはずなのに何故かキーボードを打ちレズビアン関連のサイトを検索していた。

お酒に酔った私は次々とビアン系のサイトをクリックして観覧する。

「愛し合う日々、ねぇ……」

私が短大生の頃に比べるとビアン関連のブログや出会いの場はネット上に情報が溢れている。
文章を目で追うのに疲れた私は「画像検索」に切り替えた。

「あれ、もしかして」

ふと1枚の画像が目に留まった。

「大人のおもちゃ?」

画像を拡大する。

「2人用のバイブだよね」

ゴクリ、と思わず唾を飲み込む。

特別に欲求不満を抱いているわけではない。
けれどそのバイブの画像を見た瞬間に私の中に奇妙な胸騒ぎが生まれた。

「酔ってるせいだよ」

誰もいないのに言い訳をする。

私はURLをクリックしてサイトを開いた。

「うわっ、凄く可愛い」

気になったバイブの商品名は「トゥルーユニオン・ディルド・ブルー」だった。

「ローター付き双頭ディルド……パートナーとの一体感、コレなら2人で一緒に感じられるかも」

鮮やかなブルーの双頭バイブを見つめながら私は過去の恋人の顔を思い浮かべていた。

「元気なのかな?ユウ」

風の噂で野沢《のざわ》ユウは東京でホステスをしていると聞いている。

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