その話はまた今度 5

教室が終わり、後片付けまでをすっかり終わらせると、美耶の仕事はおしまいだ。
いつもならばこの時間にはもうそろそろ眠る準備をしている雛子は、週に一回ある料理教室、つまり休み前の残業に眠たそうにあくびした。

「雛子さん、眠い?」

「そうだねえ……少し」

「寝ててもいいよ」
年下女子の言葉に、ベリーショートはカラカラと笑う。
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2ボーンチャイナとダークグリーン

リビングのパソコンデスクの横に会社用の鞄を置き、今度は洗面所へ向かいながら服を脱ぐ。あっという間に下着姿になった日菜子の後ろに着いて来て、美耶はむずむずと口元を歪ませていた。

「……なににやにやしてんの」

その表情を洗面所の鏡越しに見ていた日菜子が眉根を寄せると、彼女はきひひと小さく笑って、背後から日菜子に抱きついた。

「ひなちゃんスタイルいー!」

「こら」

「ぐへへ、ええ乳してますの~そのブラも凄く似合ってるしー!」

確かに、深緑と黒のストライプのブラジャーは驚くほど日菜子に似合っていた。

白い、陶磁器のような肉体は暗い色を得て格段に引き締まる。少しきつめの美人顔に、すらりと伸びた細い手足、裏腹に豊満なバスト。美耶が日菜子のどこを一番好きかと言えば、それは間違いなく胸なのだろう。

その証拠に、美耶は日菜子の胸を包む布に手を当て、ストライプのラインを指先でゆっくりとなぞり始める。彼女の白い指がちょうど色づく尖りの上を引っ掻くように愛撫する。日菜子はわずかに体を揺らめかせて、手早く手を洗った。
シート状のメイク落としで化粧を拭い、いくらか柔らかくなった日菜子の顔に、美耶は頬を緩める。この愛らしい隣人は、どうやら日菜子のことが大好きなようで。

「締まりのない顔でおじさんみたいなこと言うの止めなさい。あんた見た目は美少女なんだから」

「見た目は、じゃないでしょ! 中身も美少女だもん!」

そう言って美耶は頬を膨らませた。そのなんと愛らしいこと。

日菜子ほど痩せているわけではない美耶の頬のラインは、ふっくらとしていて血色がいい。瑞々しい桃のようで、思わず口に入れたくなる。ふわふわの猫毛は染めてもいないのに根元から綺麗な栗色で、薄い肌は血色を透かしてぴんく色をしている。

くるりと振り返り、日菜子は洗面台にもたれながら軽く足を組んだ。太ももの付け根に陶器製の洗面台のひやりとした感触を覚えた。

艶然として立つ姿に、美耶が熱っぽい吐息を吐いた。

「ひなちゃん、きれい」

そう言って彼女は日菜子のおなかに顔を埋める。あの雨の日の宵に出逢ったときから、美耶はスキンシップが過剰気味だった。けれどそれを欲望に直結させたのは日菜子のほうだ。

「美耶」

「なあに?」

見上げる彼女の瞳は熱っぽく潤み始めていて、日菜子の理性をぐらつかせる。
どうしよう。たぶん、いま誘っても美耶は拒まない。でも、おなかがすいていることも事実である。

しばしの逡巡の後、小さく息を吸い込んで日菜子は笑った。

「ご飯の前に、お風呂入ってくる」