チャンスなの 28

二週間後の日曜日、美耶の今後の進路のめどがついた頃に札木家のチャイムが鳴った。

訪問者についてあらかじめ伝えておいたとはいえ、瑛一郎と雛子は、やはりというか――驚いていた。
美耶が小説を書いたということ、そしてそれを出版社に送り、それを出版したいと言われていたことにだ。

出版については松元が家まで出向き、両親に話をしてくれることになったのだ。
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そのほうが売れる 27

学校が始まってまず美耶が思ったのは、なにかを自覚しても生活はさほど変わらないな、ということだった。

己の性癖を自覚しても、己の背徳心を自覚しても、友達はそんなこと知らないし美耶だって始終それを考えているわけでもない。

なにより進路のために考えることが多くて、あの日に爆発した恋心は段々と静まっていった。
もちろん、それはいつだって心の奥底で燻り続けているわけだが。

就職か進学か、そもそもそこから派生した悩みは、いまは一応就職と言う形で落ち着いている。
なんとなく憂鬱になりながら毎日を過ごしていたときに、偶然見かけたのが出版社の原稿募集だった。

作家になりたいと思っていたわけではない。
けれどこのまま特になにも考えず、流されるように進んでいくのも嫌だった。

少女特有の感傷のようなものが美耶の胸にわだかまっていたのは間違いない。
それで、まあ駄目もとだよね、と送ってみた。
そしてそんなことも忘れかけていた二ヵ月後、この松元という男からメールが来たのである。
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