3. 円を描く

furuetenemure3「なんでさっさと言わないの!」
美耶は怒ったように頬を膨らませていた。

「美耶が楽しそうだったから」

「楽しかったけどさ!」

ベッドに寝かせた日菜子の髪にドライヤーを当てて、湿った髪を乾かしていく。
ビタミンカラーのドライヤーは先日買い換えたばかりで、風量が多いのであっという間に乾いた。
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虚偽の涙 17

「んんっ! だめ、みやちゃん、やめてっ」
シャツ越しに乳首を刺激されて、雛子が頭を打ち振るう。

そんなに嫌ならもっと暴れればいい。
足も縛られているとはいえ、固定されていないのだから全力で抗えば小娘一人どうとでも出来るだろうに、それをしないのが雛子の甘さだ。

あるいは、期待でもしているのだろうか。
そうだったら楽しいのに。
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愛の殺人 16

七メートルもある縄で手首だけを纏めるのはそれなりに大変だったけれど、雛子が予想以上に抵抗しなかったので手間取ることなく準備を終了できた。

キスされてなお美耶の真意を把握できていないような雛子がおびえないように、優しく抱きしめる。
少年のように見える細い体も、抱きしめてみれば紛れもなく女性のそれで、美耶は興奮に震える吐息を吐き出した。

「美、耶ちゃん?」

「雛子さん、ごめんね」

「え? きゃっ」

痩躯を思い切り押しやると、雛子はなす術もなくベッドに転がった。
起き上がろうとする膝を抑えつけ、用意していたもう一本ので今度は足首を縛った。
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つかれた 10

『ぁ、あ……んぁ、は……ひ、あ、あっ』

遠くで聞こえる衣擦れの音。荒い吐息。美耶は思わず顔をシーツに伏せた。
下半身が重くなるのを自覚する。
そろりと指を伸ばし、胸元を探る。
淡く色付いた部分を布越しに引っ掻くと、意思とは関係なく筋肉が痙攣した。

「ん、んっ」

漏れそうになる声を噛み締めて、美耶は体を震わせる。
堪らずブラジャーをはずし、唾液を掬って胸先につけ、凝った実を抓んだ。 “つかれた 10” の続きを読む

7はじめてのひと、とキス

二人して、向かい合って肌を合わせて抱きしめ合って、触れるだけのキスをした。

「美耶、男の人としたことある?」
「ないよ」

ちゅ、と音を立ててキスをしながら、美耶は続けた。

「ひなちゃんだけ。ひなちゃんがはじめてのひと」

キスの合間に囁いた。半ば察していたことではあるものの、美耶が処女だったという事実に、日菜子は上気した頬に喜色を浮かべる。
べつに初物趣味ではない。けれど、この肌に触れたのが、この貌を見たのが、この匂いを味を感触を声を全てを、美耶の全てを知ったのが日菜子だけだという、その事実が、こんなにも日菜子の心を揺さぶる。

おもちゃは使ってたけど、と恥ずかしげに美耶は囁いた。
いいわよ。それくらい許してあげる。

「ひなちゃんは?」

日菜子の胸をやんわりと揉みながら美耶が尋ねた。

「一応」
「……あるの?」
「うん」
「へええ」
「んぅっ」

凝った乳首を押し潰されて、ひくりと背筋が震える。全裸で、ベッドにぺたりとお尻を着けた座り方では、すぐにシーツに染みが出来てしまうだろう。意識して腰を動かすと、さらりとした布目が日菜子の花びらを刺激した。

「ひなちゃんいやらしい」

気付いた美耶にからかう口調で言われ、頬が朱に染まる。
熱い唇が日菜子の鎖骨の辺りに吸い付き、鮮やかな真紅の花弁を散らす。白い肌に咲いた執着と征服の証に、下腹が疼いた。
キスマークをひとつひとつ指先でなぞりながら、美耶がぽつりと呟く。

「――――あたしが、日菜子のはじめてのひとに、なりたかった」

 

存外真面目な声で言われ、思わずその顔を見詰める。真摯な眼差しに、熱情が篭っている。それはたぶん、この日菜子の瞳にも。
二人の関係はずっとずっと、出逢った瞬間から曖昧で、それは親友のようでもあったし、飼い主とペットのようでもあったし、姉妹のようでもあったし、あるいはやはり、恋人のようでもあった。

独占欲と愛着と思慕と恋情は、根底に流れるものに差異はないから、はっきりとした関係になれないのはしかたがないと思っていた。体の関係から始まった。だからもう、とりかえしがつかないのだと。どんなに美耶のことが好きでも、恋しく思っても、きっといつまでも二人は曖昧な関係から抜け出せないのだと。
少なくとも日菜子はそう思っていた。
でも、美耶は。

「私……美耶が好き。美耶は?」
「あたしも、ひなちゃんのことが好きだよ」
「ほんとうに?」
「本当に」
「それは…………どういう意味で?」

すい、と近寄ってきた顔が、ぼやける。

「こういう、意味で」

スローモーションで唇が重なる。キスされた。もう何回もしてきた行為なのに、このときばかりは孕んでいる意味が違う。
否、きっとずっと同じだった。二人で同じ感情を抱えてくちづけて、なのに心は擦れ違っていた。こんなにも、求めているのに。
きっと、ひとめぼれだった。

「美耶、みや……」

縋りつくように、その唇に吸い付く。どんな果実よりも柔らかで甘い美耶の唇。重ねて日菜子は嘯く。

「美耶が、私のはじめてのひとだ」