5話 枯れた男

karenaihana5「僕は歩く成人病だよ」

金曜日ということもあって、
駅の裏手にあるラブホテルはどこも満室だった。

老人とはいえ、
誘われた室生も少しはその気になったのか、
それとも誘った瑞樹から「今日は帰りましょう」
とも言えない雰囲気になってしまったのか、
二人は電車に乗り、三つ隣りの大きな駅に移動した。

帰宅する通勤客で車内は混雑していた。

室生はドアに疲れた様子でもたれかかり、
なんども肩からずり下がってくるショルダーバッグを引き上げながら病気の話しをした。
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1話 『作り笑い』

karenaihana-1車で15分ほど郊外に走った国道沿いに、その商業施設はある。
もとは繊維団地と呼ばれた工場や問屋が集まっていた場所だが、
3年前にシネコンやデパートがいくつも入った巨大なビルに生まれ変わった。

「あとは、何かしら」

姑の聡子は60歳を過ぎた今も足が丈夫で、
しかも気性がせっかちなものだから、
こういう場所に来るといつもより早く歩きまわって買い物をする。

息子の勇一とその嫁の瑞樹が、あとをくっついて追いかける格好だ。
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