18話 『雨に濡れた花』

「一杯だけ、どうかな?」

雨は小降りになっていた。

終電までにはまだ時間があった。

いつもならホテルを出ると、
駅の改札の手前で小さく言葉を交わして、
自然と離れるようにして
別のホームへと足を急ぐのだが、
今夜の室生は酒を呑みたがった。

「だって先生、血糖値が」

「日本酒は我慢する。
焼酎ならいいって医者から言われてるんだ。
だから、一杯だけ」

断る理由もなかったので、
瑞樹は室生の二の腕に腕をからませた。
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