甲府盆地の暑い夏(9)|引き分け

kofu9阿川は本棚から本を出し、カーペットの上に寝転がる。だいぶ前の、好きだった女性アイドルがヘアヌードになった時の写真集だ。

開くとあの頃と変わらない愛くるしい顔が微笑み、
しかしそのポーズはよつんばいで尻と胯間をカメラに向け、大事なところのほんのわずかなボカシ以外は何もかもさらけ出している。

阿川が若い時には、
開くか開かないかのうちに
ペニスを痛いほど膨張させてきた写真集。

だからこそ、買って数十年たった今でも持っている。

今見るとそれは、
それなりの興奮をもたらすものの、
ただの肌色の曲線と黒い毛の集まりとして
本能を通り過ぎていく。

下半身の変化につながらない。

阿川はイライラしてそれを本棚に返し、
こんどはDVDをプレイヤーに入れる。

新体操の選手が画面の中でのたうち回る。
その柔軟性を駆使して脚を180度まで開いて
カメラに向け、女のそこを開いてピンク色の内部を見せる。

『入れて、入れてえ~ここに』

阿川は下半身に若干の変化を感じる。

しかしそれは固くなるにはほど遠く、
亀が面倒臭そうに頭を上げるように、
ほんの少し持ち上がったにすぎない。

阿川は焦り始める。

冷房が強すぎるのがいけないのかもしれないと思い、
設定温度を28度に上げる。

若い時なら15分、
いや時には5分も見ていれば射精したから、
同じ箇所ばかりくり返して見たDVD。

今日はそれを最初から見て、
今やそれが終わりに近付いていた。

AV女優はそこから白いものをたれ流し、
「ああ~ん……中で出しちゃったの~」と言っている。

2回目の視聴。

何とか阿川のソレは、
こすれる程度の固さにはなってきた。

ローションを手につけ、ペニスをこすり始める。
必死でしごく。

手の中でそれは、油断するとすぐうなだれる。

画面では男女の結合部がアップになる。

阿川は今まで抱いた中で一番いい女と、
映像の女のそれを重ね合わせる。

部屋の温度が上がる。
阿川のひたいから汗がしたたり落ちる。

AVが2回目のフィニッシュに向かう。

阿川はそれに間に合わせるよう、
ペニスをこする手をさらに速める。

画面中の男がビクッとする。

恐らく疑似だろうが、
男が元新体操の女子選手の中に射出をし始める。

「あうっ、ああ、あおおっっ」

男が画面の中で言うのと、
阿川が声を発するのがほぼ同時だった。

だがAVと違って阿川のそれは
手の中で弱々しい鼓動をし、
申しわけ程度の白い液体を放出した後、
しばらくするとすぐに元気をなくした。

阿川はぐったりした。

射精には至ったから、一応今日の「勝負」は完敗ではない。

だが阿川の求める状態に
ほど遠いことには変わりがなかった。

せいぜいのところ「引き分け」で、
勝負を次に持ち越したに過ぎない。

--また、あの悪夢を見そうだな……

阿川は時間だけを費やした徒労感を感じながら、
ベッドに横たわった。

このままサプリを飲んだり、
スクワットをし続けても、
顕著な効果は得られないかもしれない。

阿川は先日ネットでちらっと見た、
ED対策の器具のことを思い出した。

こんどはああいう物を使ってみるか……。
阿川はぼんやりと思った。

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