甲府盆地の暑い夏(23)秋空

お盆を過ぎると、甲府盆地に連日現れていた
入道雲もだんだんと姿を見せなくなる。
夜は秋の虫が、リーリーと静かな合唱をし始める。

9月に入ると、勝沼は連日ぶどう狩りの人々であふれる。
ぶどう収穫の時期が終わると、今度は洋ナシが実をつける。

盆地を囲む高山の木々がだんだんと色づき始めた時には、
阿川と美智が二人で会い始めてから3ヵ月が経っていた。

阿川と美智が「復縁」した時の電話では
「好意を持っているのかどうか分からない」と言った阿川だったが、
この頃は自分が美智に愛情を持っているということを自覚していた。

客観的に見ても、十数回も男女二人だけで会うというのは
恋人同士でしかあり得ない。

しかし阿川はそれを、美智には告げなかった。
一つは阿川の性格的なものだったが、もう一つはEDのためだった。

美智とこれ以上接近すると、
どうしてもその先の最終的な行為に行き着く。
その時に「できない」という事態になることを恐れているのだった。

二人はキスも、手をつなぐこともしていなかった。
美智はその事について不満を言ったりはせず、いつも明るかった。
しかし時折、寂しそうな横顔を見せることがあった。
そういう顔をすることは、会うたびに多くなっていくようだった。

阿川の健康状態は、努力の甲斐あって改善していた。
2週間に1度おこなう血液検査では、
悪玉コレステロールの顕著な減少を示していた。

阿川は久しぶりに、ED対策器具を買ってみた。
ネットで調べて評判の良かったものだった。

新宿のED治療医に器具のことを説明して相談すると、
薬ではなく物理的な作用を加えるものであれば、
病院の治療と並行して使ってもかまわないと言われた。

今日はその品物が届いた。
早速使ってみる。

プラスチックのチューブにペニスを入れ、
その中の気圧を下げてペニスに血を集めるという仕組みの器具だった。
本当にそんな単純な事で効果があるのかと阿川は思った。

まず付属のゼリーをペニスにつける。
ペニスが完全に柔らかいままだとチューブに入りにくいので、
ゼリーを塗りながら自慰をするように刺激する。

チューブの入口を亀頭に当て、少し差し込む。
ここからはチューブについているポンプによって気圧を下げ、
ペニスがチューブに吸い込まれるようにする。

ペニスがチューブにすっぽりと収まった。
すでに筒内の気圧は低い。

陰茎が膨張する感覚がある。
いや確実に、大きくなっている。
その膨張の仕方は、EDになって以来初めて経験する感覚であった。

「…………!!」

阿川の背筋がぞわっとなった。

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