甲府盆地の暑い夏(18)思わぬ原因

数日後、もう一度バイアグラを試してみた。

結果は同じであった。

阿川は先日受診した、東京の病院に電話をした。
激怒していた。

「本物のバイアグラじゃなくて、
ラムネ菓子でも処方したんじゃないのか」
とでも言って怒鳴りつけるつもりだった。

ところが医師は、落ち着いていた。
「そうなる可能性はあると思っていた」と言う。

医師が言うには、
阿川の受診の数日後に出た血液検査の結果が、
予想以上に悪かった。

悪玉コレステロールの値が「要注意」を越え、
「要治療」のレベルに達していた。

高脂血症である。

すでに動脈硬化が進行している可能性が高く、
そうなるとバイアグラは非常に効きにくくなる。

阿川はがく然とした。
動脈硬化は命に関わる問題である。

翌日阿川は、支局長に嫌味を言われながら
また有休をとってその病院に行った。

そこで検査結果の説明を受けた。

やはり、すぐにでも
高コレステロール血症の治療を始める必要がある。

しかしその病院はED治療専門で、内科ではない。

それで担当医師は、
甲府の知り合いの内科医を紹介してくれた。

その医師と連携しつつ、
ED克服も視野に入れながら協力して
治療をするよう計画を立てると言う。

阿川は感謝して辞去し、その日の午後すぐ、
紹介された甲府の病院を訪れた。

阿川はそこで、食生活の改善を中心とする
生活指導を受け、計画を立てた。

卵・肉類・酒の摂取を抑えることには
げんなりしたが、仕方がない。

それと週2回、
息が弾むような運動(有酸素運動)をするよう言われた。

思えば2年、健康診断を受けていない。
ということはまる3年、
自分の体の状態を知らなかったのだ。

その間に急激に進行した不健康に、
阿川はショックを受けた。

思い当たる節はある。
というより、節だらけであった。

食事は外食かコンビニ弁当が多く、
真夜中でもお構いなし。
酒は好きだし、甘い物も嫌いではない。
運動らしい運動はほとんどしていない。

阿川は若い時から太らない体質だったから油断していた。
そのツケが中年になり、一挙に回ってきたのだろう。

しかし、悪い事ばかりではなかった。
EDの原因の一つが、明確に示されたということだ。
高コレステロール血症を治すことが、
希望として現れたのである。

そうこうしている間にも、
坂井美智からのメールは時々来て
西沢渓谷はどうですか」
「昇仙峡では」
など書いてきていた。

先日映画に行った時に阿川が言った、
「行くなら自然を満喫できる所」
という言葉への回答である。

阿川はまだ行くかどうか迷っていたのだが、
高脂血症が判明したので運動をする必要が生じた。

この際、山登りも悪くないのではないかと思った。

それで美智に
「自分のような素人でも気軽に登れる山があれば」
と返信した。

美智は「八ヶ岳なんかいいですよ」と返信してきた。

八ヶ岳のことは、いくら山梨に来て
数ヶ月の阿川でも知っている。

甲府のはるか北方にありながら
晴れた日にはその山頂をくっきりと見せる、
日本を代表する高峰の一つである。

阿川が甲府に来た4月には、
まだ雪がその山頂を白く覆っていた。

「命をかけずに登れるような山ですか」
とメールをすると、美智は
「ハハハ o(^O^)o 大丈夫ですよ」
と返信してきた。

別に頂上を目指して道なき道を行くわけではなく、
山腹のハイキングコースを歩くということだそうだ。

阿川は行くことにした。

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