30話 『実のなる花』

karenaihana30不思議なこともあるものだ。
瑞樹はいつも室生のことを思い出しては、
そんな感慨にひたる。

室生が亡くなってから、わずか三日後に、
瑞樹は妊娠していることを産婦人科の医師から知らされた。

 

 

映画館の座席で室生の精液を飲み込んでから、
室生に抱かれることはなかった。

 

故郷で暮らす義理の弟が末期癌で、
室生は最後を看取るために帰郷した。

作詞教室は代理の若い作詞家が勤めた。

最後を看取るはずだったのに、
室生は病院のはす向かいの居酒屋で酒に酔い、
病院に戻ろうとして国道を渡りかけたときに、
トラックに轢かれて亡くなった。

皮肉なものだ。
義理の弟は現在も生き長らえている。

世間的には、
作詞教室の講師と生徒という
関係でしかなかったので、
通夜にも葬式にも呼ばれることはなかった。

ただ若い作詞家から事務的に
室生の死を知らされただけだった。

室生が故郷に帰った後で、
勇一はウィバイブ4を妻が使うところを見たがったので、
瑞樹もそれに応じた。

そのうちに、男根を挿たれたまま
二人で楽しめることも知ることになり、
夫婦のセックスで使った。

その快感は勇一を夢中にさせた。

そうなっても、
もう室生を浮気相手だと疑うこともなかった。

室生は夫にとって、
あくまで魅力のない老人としか映らなかった。

瑞樹は最後まで、
室生の精液を卵子にかけることはなかった。

老人の精子は今ごろ、どこの空を彷徨い、
泳いでいるだろうか。

勇一と一つになるとき、
萌芽と蜜道に、
ウィバイブ4はぴったりと密着して振動していた。

その振動は勇一の亀頭に伝わり、
瑞樹は夫とのセックスで初めて本当の絶頂を感じた。

もうフェラチオを喜ぶだけの夫ではなかった。

これも皮肉なことだと瑞樹は思う。

もともとは不能だった室生に
刺激を与えるつもりで購入したはずなのに、
結局、夫婦が再生して、
妊娠するためのアイテムになってしまった。

今日はいい天気だ。
ベランダで洗濯物が風を受けて
気持ちよさそうに踊っている。

掃除も光熱費の支払いも終わった。

午後、歯科医院の予約が入っているだけだ。

治療の帰りにスーパーに寄って
晩ご飯の買い物をする。

ベッドにゆったりと仰向けになった妊婦の瑞樹。

子宮の中では新しい命が成長を続けている。

そして瑞樹のそばには
ウィバイブ4が置かれている。

室生と夫、そして瑞樹。
3人の性器に濡れたバイブ。

「……」

ベッドで膝を立てる。
もう生理はない。

けれど欲しい体は火照っている。
夫の帰りは遅いだろう。

瑞樹は両手の指をパンティに引っかけ、
ゆっくりお尻からずらした。

ウィバイブ4とリモコンを手に取り、
その先端をゆっくりと萌芽と蜜道に押しつけていった。

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