28話 『漂う花』

karenaihana28「そうか、旦那さんに疑われたのか」

夫の勇一が福岡に出張した平日の午後、
瑞樹は室生を誘って映画を観た。

都内でも珍しくなった古い名画座

午前中の客席には室生と瑞樹、
それに若いカップルしかいなかった。

上映が始まるまでの時間、
トイレから戻った瑞樹に室生が言った。

「優しそうな人だね。
私を見て安心したのかな。
こんな年寄りと君が不倫をするはずはないって」

「そうかも」

瑞樹と入れ替わりに、
カップルの若い女の子がトイレに立った。

「でも、不思議なの」

室生の右の掌をそっと握って、
瑞樹はそれを自分のスカートの上に置いた。

「先生がいて、こんなことになって、
夫に疑われて、そしてこれのことを知られたから」

スカートの上から
膝を撫で始めた室生の指が止まった。

「だから、私のこと、
たくさん愛してくれるようになったみたい」

室生の指先が、
瑞樹の股間のウィバイブ4の感触をとらえた。

「…つけてきたの?」

「ええ。さっきトイレで」

隣の座席に置いたバッグに手を入れ、
取り出したリモコンを室生に差し出した。

「映画の途中で居眠りしちゃったら、
先生、これで私のこと叱って」

客席の照明がゆっくりと落ちてゆき、
くたびれたスクリーンが幕を開けた。

スマホの電源を落としながら、
女の子が慌てて戻ってきて彼氏のそばに座った。

(…これから、どうなるのだろう)

モノクロの、古い映画をぼんやり観ながら、
瑞樹は心の中で思った。

私は、誰のために、
なんのために妊娠を望んでいるのだろうか。

夫の親を満足させるためだろうか。
いや、そうではない。

では勇一のためだろうか。

勇一を本当に愛しているのだろうか。

子供を欲しがらない夫の赤ちゃんを産んで、
本当に幸せになるのだろうか。

では室生はどうだろう。
そっと瑞樹は隣りの座席に座った老人を見た。

掌のリモコンを持ち直し、
室生がそっとボタンを長押しするのが同時だった。

ハイヒールの中で、足の指が突っ張った。

瑞樹の股間でウィバイブ4が振動を始めたのだ。

パンティはトイレで脱いでカバンに入れてきた。

映画館でそんなことをするのも初めてのことだから、
便座に座ってバイブを挿れるだけで
もう蜜があふれていた。

映画の台詞や音楽で、
少しくらい声を出しても気づかれる心配はなかった。

「ああっ…」

リモコンを握っている室生の掌をつかみ、
瑞樹は指の爪を手の甲に立てた。

あふれた蜜が集まり、
にたれて落ちてゆくのがわかった。

スカートがシミになるかもしれない。

そうだ、また生理が近いのだ。

室生がバイブの振動のレベルを上げていった。
瑞樹にもっと声を出させようというのだ。

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