19話 『水中花』

赤いパンティを小さく丸めて、
洗濯機の中、枕カバーの下に差し込んだ。

熱いバスタブのお湯に少し長く浸かり、
時間をかけて髪の毛も洗った。

室生の体臭がしみついているわけではなかったが、
やはり自分の中に、
老人と初めてセックスをしてしまったという
後ろめたい気持ちがあるのだと瑞樹は思った。

初めてというのはおかしいかもしれない。

これまでに何度も室生の体を愛撫し、
男根を手でしごき、
口にふくんで唾まみれにしてきた。

どんなに卑猥な行為をしても、
萎えたままで挿入できないという関係が面白かった。

だからもっともっと、自分も淫乱になれた。

それが今夜はどうだ。

たったひとつの、これまで経験したことのない
バイブを手に入れたことで、
老人とひとつになってしまった。

しかも勇一とは味わったことのない
激しい絶頂だった。

熱い湯の中、そっと花弁を指で撫で、
中指を蜜道に挿れてみた。

2時間前まで、
この中に室生の漲った男根があった。

突いては抜いて、
あふれた蜜をかき出して
自らの陰毛を濡らしていた。

それと同時に、クリトリスと入り口をバイブが…。

(…そうだ)

カバンの中に入れたままのウィバイブ4を、
ホテルで洗っていなかったことに瑞樹は気づいた。

何故?…

そうだ、洗おうとしたら、
洗面台の水が少し茶色になったのだ。

それで赤い袋にそのまま入れて、
帰ってからと決めたんだった。

バスタオルで手早く体と髪の毛を拭き、
寝室に入った。

先にシャワーを浴びた勇一は
ベッドに座ってリモコンを手に、
テレビでアメリカンフットボールを観戦していた。

パンティとパジャマを持ち、
足早にキッチンへ移り、
バッグを手にしてまた洗面所に戻った。

白いパンティにパジャマを着て、
腕まくりしてから赤い袋のチャックを開いた。

ウィバイブ4を取り出して、
水道の水で手早く洗った。

それを赤い袋に戻し、
作詞ノートの下に隠ししてから、
ドライヤーで髪の毛を乾かした。

先に寝てほしいと願いながら。

寝室に戻るとテレビは消えており、
リモコンをベッドに投げ出したまま、
勇一が布団の中で瑞樹に背中を向けていた。

少しほっとして、
リモコンをテーブルに置き、
灯りを消して布団に滑りこんだ。

眠っていたと思った勇一の手が伸びてきて、
瑞樹の手を握った。

「起きてたの?」

「今日は、ありがとう」

「何それ」

寝返りを打ってこっちを向いた勇一が、
いきなり瑞樹を抱きしめてきた。

室生が唇を押しつけてきた首筋の同じあたりを、
夫の舌が這いまわった。

「ちょっと、何?」

普段、ほとんど瑞樹から求めるから、
ここで拒む理由が見つけられない。

むしろ喜んで応じなければならないのに…。

「んんっ」

瑞樹の口の中に、
勇一の舌が差し込まれた。

妻の舌もすぐにそれに応じた。

老人のと夫の舌。
同じように女はからめるものなんだ。

頭の中、どこかさめた瑞樹自身がそう呟いていた。

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