1話 『作り笑い』

karenaihana-1車で15分ほど郊外に走った国道沿いに、その商業施設はある。
もとは繊維団地と呼ばれた工場や問屋が集まっていた場所だが、
3年前にシネコンやデパートがいくつも入った巨大なビルに生まれ変わった。

「あとは、何かしら」

姑の聡子は60歳を過ぎた今も足が丈夫で、
しかも気性がせっかちなものだから、
こういう場所に来るといつもより早く歩きまわって買い物をする。

息子の勇一とその嫁の瑞樹が、あとをくっついて追いかける格好だ。
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2話 『疼く花芯』

karenaihana2この頃は、こういう商業施設のトイレにもシャワー便座が当たり前になった。

瑞樹が入った個室も便座に座ると、ヒーターでお尻を温められる。掃除が終わったばかりでよかった。

個室は清潔で、ペーパーも几帳面に三角に折られている。

くるぶしのあたりまで下げたパンティは、まだ血で汚れていない。もしものためにナプキンを貼ってきた。

それを剥がして丸め、手のひらで握ったまま、細く長い吐息をつく。
金色の尿がほとばしり、便器にはじけて流れ落ちていく。
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3話 『そらす夫』

karenaihana3似た者夫婦とでもいうのだろうか。
勇一の両親は瑞樹の眼にはそう映った。

快活で外向的でいつも溌剌としている。
聡子の趣味はバレーボール、登山、コーラスと多彩だが、聡子の夫、舅の正治もまた、釣りに鉄道写真、ジョギングに剣道と、警察官を定年退職した後も忙しく暮らしている。

今日はその正治の六十五歳の誕生日だ。

買い物を終えて車で実家に向かった。
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4話 『枯れない花』

知らないうちに あなたに惹かれ
知らないうちに 傷ついた
あなたの白い  シャツの染み
いつしか    愛しく思い出す

時代遅れの歌詞だった。それが室生のたったひとつのヒット曲だった。

ヒットチャートに、2時間だけ入ってまして」

白髪混じりの無精髭の頬に手で杖をして、室生は何もかも諦めたような顔で微笑んでいた。
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5話 枯れた男

karenaihana5「僕は歩く成人病だよ」

金曜日ということもあって、
駅の裏手にあるラブホテルはどこも満室だった。

老人とはいえ、
誘われた室生も少しはその気になったのか、
それとも誘った瑞樹から「今日は帰りましょう」
とも言えない雰囲気になってしまったのか、
二人は電車に乗り、三つ隣りの大きな駅に移動した。

帰宅する通勤客で車内は混雑していた。

室生はドアに疲れた様子でもたれかかり、
なんども肩からずり下がってくるショルダーバッグを引き上げながら病気の話しをした。
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6話 砂丘の足跡

karenaihana6「瑞樹、この頃、明るくなったよな」

ネットで拾い読みした面白いニュースを話して聞かせながら、先に吹き出した妻を見て勇一が言った。

「そう? いつもと変わらないけど」

後ろめたい気持ちも少しはあるのだろうか、
それとも室生との変な関係が滑稽で、
モノトーンの生活に小さな刺激を与えてくれているのだろうか。

瑞樹は自分でもよくわからない。

「晩飯はいらないよ。会議が長くなったら泊まるかもしれない」

「あまり飲み過ぎないようにね」
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7話 厄介な玩具

karenaihana7作詞教室が終わり、
雑居ビルの前で皆と別れた。

「すみません、お先に失礼します」

夫の晩ご飯を作ると嘘をついて、
わざと足早に立ち去った。

電車に乗り、四つ先で私鉄に乗り換え、
二つ目の駅前の喫茶店で室生を待つ。

小一時間もすると、
さっきまで教壇で教えていた室生が、
目尻に皺を作って店に入ってくる。

珈琲代は室生が払ってくれる。
ホテル代は割り勘と決めている。

先週のは風呂が汚かったので、
今夜は新しいホテルにしようと
小声で話しながら駅の裏通りを寄り添って歩いた。
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8話 はけ口

karenaihana8室生という厄介な玩具を瑞樹は楽しんだ。

湯から上がって、
二人で冷えた缶ビールを飲む間も、
誰にも言えないような夫婦の悩みを打ち明けた。

「私のここに挿れるより、
ゆう君はフェラのほうが興奮するの。
いつも私にしゃぶってくれって…」

バスタオルも体に巻かず、
太ももを開いて花弁が露わな格好で瑞樹は室生に話す。
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9話 玩具の誘惑

karenaihana9-2「ああっ、もっと、もっとぉぉ!」

花弁からあふれた蜜が、
室生の萎えた男根にからみつき、それを花びらの重ねが摩擦をして、いつしか蜜蝋でも塗りたくったように白く濡れ光っていった。

 

硬くしこりきった乳首が
室生の指の又で締めつけられ、
それに呼応するように瑞樹もまた、
両手をついた室生の乳首を爪の先で掻きむしった。
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10話 不思議な玩具

karenaihana10「病院なんかに頼るのは嫌なんだ」

一瞬、デジャヴのようだと瑞樹は思った。

作詞教室から二日後の昼下がり、
夫の勇一と二人で久しぶりに新宿で映画を観に行った日のことだった。

ロビーで上演時間を待っているとき、
二、三歳の女の子を抱いたカップルが向かい側のソフアに座っていた。

「同じ回の上映じゃなきゃいいけど」

「あら、可愛いじゃない」

「騒がれたらたまらないよ」
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