お客様N(11)|伊藤への罰

伊藤が、外為部門の月例報告を始める。
エリカは足を組んだまま、目を閉じている。

伊藤は不機嫌な顔をして、ちらちらとエリカの方を見る。

この女は本当に報告の内容が分かるのか、と思っているに違いない。
棒読みの早口で、一刻もはやく終わらせようとしているようだ。

「アルゼンチン通貨危機」
エリカが突然言った。

続きを読もうとしていた伊藤は、目と口を開いたまま固まった。
脂汗がドッと出た。

この女には何も分からないと確信していたから、その驚きは尋常ではない。

「いや、あの、それは……」

実際、エリカには成田の会社のことはまったく分からない。
玲子が小型イヤホンを通じ、伊藤の報告の中の突っ込むべき部分を指示しているのだった。

伊藤はアルゼンチンの通貨の下落で、この月かなりの損失を出していた。

「なぜ予測できなかったのですか。政権の不安は数ヶ月前から続いていたはずです」

伊藤はソファから立ち上がった。
「それはその、つまり……」

伊藤はしどろもどろで、弁明にならない弁明を続けた。

「言い訳は結構です。今日はそのことであなたにを与えていいと、社長から言われています」

「は……罰とおっしゃいますと……」

伊藤は最悪の場合も考えたのか、青ざめた。
それを見てエリカはくすりと笑った。

クビにはなりません。減俸もありません。ただしそれは、今日これから私の言うことを聞けば、の話です」

「は……」
伊藤はどういうことになるのか分からず、立ちつくした。

「ではまず、私の肩を揉みなさい」

「は?」

「聞こえませんでしたか。肩を揉みなさい!」

「は、はい!」

伊藤は跳ねるようにしてエリカの後ろに回り、肩を揉み始めた。
エリカにここまで毅然とした態度をとられると、「もしかしたら大物かもしれない」という気持ちになっているかもしれない。

無言でエリカの肩を揉む。
エリカは揉ませながら、後ろの伊藤を横目で見る。

「揉み方が下手すぎる。話になりませんね……損失を出して申し訳ないという気持ちあります?」

「は、はい。もちろんです。深く反省しております」

「肩はもういい! 次は腕」

「は、はい。かしこまりました」

普通腕を揉む必要は普通ないし、若い女の腕に触れられるのだから、罰としてはおかしい。
しかし伊藤がそれを疑問に思わないのは、軽いパニック状態に陥っているかもしれない。

「よろしい。では脚!」

「は……?」
さすがに伊藤はおかしいと思ったようだ。

恋人でもないのに、理由無く脚に触らせる女などいない。

「ぐずぐずしない! 脚を揉みなさい!」

「は、はい」

伊藤はストッキングをはいたエリカの脚の、ふくらはぎあたりを揉み始める。
必死だ。

しかしその顔に、だんだんと性的快楽の色が出始める。
もともとM性の強い男なのだから、このシチュエーションにも興奮してきたのだろう。

鼻息が荒くなり、必死に脚を揉む手が徐々に上へと移動する。
手はエリカの膝を過ぎて、太ももへ。

エリカの片足の太ももを両手でつかんで揉み、さらにその手は奥へ。
伊藤は引き寄せられるように、顔を近づけてエリカの太ももに頬ずりしようとした。

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