お客様N(10)|女王エリカ到着

成田の観賞のためのSMプレイ・第一回目は終わった。

「いかがでしたか」
玲子が成田に聞いた。

「おう。悪うない」

「それでは、この計画を続けてよろしいのですね」

「進めてくれ。しかしこれはまた、ようしゃべるプレイじゃのう」

「はい。SMでは、言葉による責めが大きなウェイトを占めると聞いております。それから今日はお相手の方が不慣れですので、ハードな事は避けたのだと思います」

「ほう……なるほどな。で、次は逆のパターンで、女が責める方か」

その、責める方の女が数日後に到着した。
東京で現役の女王様をやっているエリカ(推定26歳)である。

エリカは東京の店に出ているので、矢掛町での打ち合わせやプレイがある時のみ来てもらうという約束だった。

玲子はさっそくエリカと相談し、ネットショップでSMグッズの発注をした。

・アナルパートナー
・ペペスペシャル バックドア(アナル用ローション
・SMart(スマート)JOINT_002 アイマスク

SMプレイの二回目がおこなわれる日になった。
成田は例によって、観賞部屋で待機している。

「今日の出演は女王様か。相手はどこの誰な」
玲子は珍しくクスクスと笑い、口を押さえた。

「それはご覧になって確認された方がよろしいかと……」

「お!?もったいぶりよるな」

隣室を見ると、すでにエリカがいて椅子に座っている。
グレーのスーツを着ている。

スカート丈の短いいわゆる「キャバスーツ」ではなく、普通のスーツだった。
今までは対象者を連れてくるパターンばかりだったが、今日は自ら入ってくるということか。

待っていると、エリカのいる部屋のドアがノックされた。

眼鏡をかけた、やや小太りの男が入ってきた。

「伊藤……!?」
隣室で成田が叫んだ。

普段は岡山で事務所で働いている、成田の会社の社員である。
外国為替を見る目に非常に優れたものがあり、外為部門のリーダーで稼ぎ頭だった。

「こいつか!?」

成田が玲子を見ると、玲子はまた口を押さえてクスクスと笑った。

「前にうちの社員の方々の身辺調査をした時に分かりまして。以前からそういったご趣味をお持ちのようです」

「お前も人が悪いな」

成田が苦笑する。

「秘書の江崎さんはおられませんか? この部屋に来るように言われたのですが」

『鑑賞部屋』のことはプレイに関わっている3人しか知らず、伊藤も知らない。
だからこの部屋に呼ばれたことは、伊藤は不審には思っていない。

ただ、見知らぬ女が部屋の中にいたことに驚いたようだった。

女が椅子で足を組んだまま言う。
「聞いていませんか? 江崎さんはいません。社長もいません。今日は私が報告を聞きます」

伊藤はその言葉にギョッとし、うさんくさげにエリカを見た。

「江崎さんがいない……? 私は今日、その江崎さんに呼ばれたんですよ。だいたいあなた、どなたです? 社内の機密事項もあるから、誰にでも話すってわけにはいかないんですが」

「私のことが信用できないんだったら、メールをご覧なさい」

伊藤が急いで携帯を取り出す。
伊藤にはしばらく前に、玲子からメールを打ってある。

伊藤はメールの文面とエリカを交互に見て、まだ不審そうな顔をしていたが、「失礼しました。それでは報告させていただきます」と言ってソファに座った。

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